銭湯のある街の物語 第1回 東京編
【タカラ湯】東京都足立区千住元町

宿場宿の面影が残る、
人情味にあふれた下町の銭湯

気泡風呂や赤外線風呂の他、よく体が温まり疲れが取れると評判の薬湯もある。

■銭湯データ
【タカラ湯】たからゆ

住所 東京都足立区千住元町27-1
電話 03-3881-2660
営業時間 15:00〜23:30
休業日 毎週金曜

 JR常磐線東京メトロ千代田線日比谷線東武伊勢崎線つくばエクスプレスの5路線が乗り入れる東京北東部の主要駅「北千住駅」。国道4号線を挟んだ千住界隈は、日光道中と奥州道中の初宿であり江戸四宿のひとつで、芭蕉の「おくのほそ道」の旅も千住から始まりました。多くの旅人を送り出し、迎え入れた宿場宿の面影が残る北千住駅周辺は、人情味にあふれた商店と銭湯がにぎわう下町の雰囲気そのもの。中でも「キングオブ縁側」と呼ばれているタカラ湯は、地元の人々の社交場であり、また、銭湯好きなら一度は訪れてみたいという憧れの存在でもあります。

 昭和2年に荒川近くで創業したタカラ湯は、道を挟んだ現在の場所に昭和13年に改築されました。入り口真上に飾られている七福神の彫刻は、改築の際、柴又帝釈天の門前の園田仏具店にて作成されたもの。ひらがな一文字が書かれた板が入り口脇に吊るされており、「ぬ」は、湯を抜いた(ぬ板)=準備中を、「わ」は、湯が沸いた(わ板)=営業中を表しています。中に入ると突き当たりに庭園が広がり、ガラス戸を開けると男湯の脱衣所に沿って奥の湯船まで縁側が続き、ツツジやアジサイ、紅葉など四季折々の花や木々、石燈篭や錦鯉が泳ぐ池を眺めることができます。湯上がりにビールを飲みながら庭園を眺めれば、都内の銭湯にいることを忘れてしまうほど贅沢な時間が流れます。

 広い造りの脱衣所と浴場は今でこそゆったりと利用できますが、二代目の番台日記によれば、終戦直後の頃のタカラ湯には毎日1,500〜2,000人、大晦日などには3,000人もの客入りがあり、歩けないほどの混雑ぶりだったと記録されています。実母散、よもぎ、ローズマリー&マジョラムなどの生薬を成分としたこだわりの薬湯は、よく温まり疲れが取れると評判。銭湯絵師・中島盛夫氏によって描かれた富士山を眺めながらいい汗が流せます。
タカラ湯までは、各線「北千住駅」西口から徒歩20分ほど。途中には千住名物やりかけだんご、おでん種専門店のマルイシ増英など下町グルメはもちろん、千住の町おこしを願って近隣の寺社に安置された七福神の石造「千寿七福神」や芭蕉の句碑、「キングオブ銭湯」と呼ばれる大黒湯など有名スポットが満載。荒川土手に回れば、テレビドラマ「三年B組金八先生」の世界も楽しめるので、散策も兼ねてのんびり訪ねたくなる魅力にあふれた街です。

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